「ケンカツ」というドラマがあります。あなたは見たことありますか?
「健康で文化的な最低限度の生活」というドラマで、自治体の福祉事務所のケースワーカーの仕事がテーマの話です。ケースワーカーは生活保護の対応をする人ですね。
あまり視聴率はよくないドラマみたいですが…
吉岡里帆主演で“大コケ”している連続テレビドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)の第8話が9月4日に放送され、平均視聴率5.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録した。前週第7話の5.3%からは0.3ポイント回復したものの、厳しい数字には変わりない。
Business Journal 『健康で文化的な最低限度の生活』吉岡里帆、視聴率も演技の評判も悲惨で「公開処刑」状態
9月18日が最終回だそうです。
このドラマ、ちょっと見ただけなのですけど、元公務員から見た生活保護の仕事についてこのドラマと絡めて思ったことを書いておこうと思います。
健康で文化的な最低限度の生活とは?
ドラマのタイトルである『健康で文化的な最低限度の生活』とは、柏木ハルコが原作の漫画ですね。
このテーマ自体は中学の社会で習ったことのある話だと思います。
憲法に定められた規定によるものです。
日本国憲法 第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
いわゆる「生存権」の規定ですね。
この規定を元に全国の自治体の福祉事務所では、ケースワーカーが生活保護の対象者と向き合っているわけです。
このドラマはいいですね。何がいいかというと、吉岡里帆、川栄李奈という可愛い女の子がケースワーカーとして働いています。
私もこんな福祉事務所なら働いでみたいですよ。毎日の仕事がとても楽しそうです。辛いことがあっても一緒に頑張れると思います(笑)
ケースワーカーのドラマと現実
私が市役所に勤務していた時、ケースワーカーとして配属されることはありませんでしたので、ドラマと直接比較することはできないのですが、私の目に映った光景からドラマと現実を見て行きたいと思います。
福祉の部署にはいましたので、少しは空気感などはわかると思いますし、同期や知っている職員がケースワーカーになってもいましたので多少の話は聞いています。そのあたりの知識から見ていきたいと思います。
まあ、ドラマで起こる出来事はそれなりに実態に合った話も多いと思います。大なり小なり誇張や演出があるとは思いますが、基本的な仕事の枠組みは、ああいうものでしょう。
ただ、ちょっとスマートすぎる職場になってるなという感じはします。
では、私の視点で見て行きましょう。偏見も含みますのでそのあたりは咀嚼してください。
私の勤めていた市役所の生活保護の係での話ではありますが、吉岡里帆、川栄李奈のようなかわいこちゃんは配属されることはありません。絶対にありません。そもそも私が勤めていた期間で、女性がケースワーカーとして配属されたのを見た覚えがありません。
ドラマと違って、やはり職場はちょっと重い空気の印象はあります。女性がいないからか、仕事の内容が重いからか…
正直な話、ちょっと変わった人を相手にすることが多いため安全性を考えてのことでしょう。もちろん、その大部分の人は本当に生活に困っていて、精神的にも、経済的にも、健康的にもハンディを持っている人のケアをしているのですが、やっぱり暴力的な面に出会うことがあるんですよね。
そういう面で、私のいた自治体は男性のみを配属させていたのかもしれません。
私のいた自治体の福祉事務所で実際にあった話
先ほど暴力的な面に出会うことがあると書きましたが、実際に私がいた時代のケースワーカーが殴られた話がありました。私の同期だったのでよく覚えています。
まあ、だいたいこういう事件起きるのは、生活保護の申請に来ても対象者と該当しないと判断されたものがほとんどだと思います。同期が受けた暴力もそうでした。
その場に合った文房具で殴られたようで、とりあえずは流血事件になり、警察が呼ばれることにもなりました。まあ、そんなに大きな怪我でもなかったのですけどね。数年に1回はこの手の事件は大なり小なりあったようです。
こういう事件もあったわけですし、それにその手の人もよく来たりするんですよね。やはり公務員になる人って、安定を求めてるような人も多い訳で、そういう修羅場って避けたい人って多いと思うのです。
そんな部署に配属が決まったある若い職員は、何を悩んだのかそういう修羅場に出くわすのが嫌なのか、配属早々から精神的に参ってしまい、人事に相談したようで1年で配属が変わりました。その上司はよく知ってる人でとてもいい人なのですが、人事には要らん評価をされたでしょうね。面倒見が悪いとか。1年で異動って、それを聞く人事課も人事課だと思いましたが。
職場に吉岡里帆、川栄李奈のようなケースワーカーがいたら、また違った世界をみることができたのかもしれませんけど。
思い出すのは「保護舐めんな」ジャンパー事件
以前、小田原市のケースワーカーが「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)のロゴがプリントされたジャンパーを着て保護者宅を訪問したいたことが問題になりましたよね。
生活保護受給者を支援する神奈川県小田原市生活支援課の歴代職員計64人が「保護なめんな」などとプリントしたジャンパーを自費で作製していたことが分かった。保護世帯の訪問時などに着ていたという。市は「不適切だった」として着用を禁止、17日に記者会見し、福祉健康部長や副部長、課長ら7人を厳重注意したと明らかにした。
ジャンパーの胸には漢字の「悪」を描いたエンブレムがあり、ローマ字で「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)と記されていた。背中には「不正を発見した場合は、追及し正しく指導する」「不正受給するような人はクズ」という趣旨の英語の文章が書かれていた。
毎日新聞 「保護なめんな」ジャンパーで受給世帯訪問
もちろん、この件に対して人権に配慮を主張する側から批判があったのは当然です。確かにジャンパーの文字・内容は不謹慎でもあります。
でも、彼らが置かれている状況もわかってあげて欲しいなとも思います。公平、公正な運用をしなけらばならないという使命感もあるでしょうから、不正受給などは本当に怒りを覚えていると思います。これはケースワーカーに限らず、他の部署の補助金、給付金、制度利用など、平等にやりたいと思ってる職員は多いと思うんですよね。その不公平をもたらす仲介をしているのが、議員だったりするのですから。
最後に
生活保護費の給付の日は、福祉事務所にお金を受け取りに来る人が並びます。大部分の人は、体が不自由だったり、見た目はわからないけども、心の壁で社会に適応できないなど、しっかりケアしなくてはいけない人なのですが、時々見慣れた顔がいたりするんですよ。
どこで見たことがあるか。それはパチンコ店。しかも常連。
そんなのを見てると、「どういう理屈?」って思うのは当然ですよね。何に使ってもいいのはわかりますけど。建前は社会復帰させるまでが目的でしょうからね。
自治体によっても、その辺の取り扱いが違うのも困ったものですが、地域性のものなのか、経済状況のものなのか、本当様々だと思います。
まあ、とりあえずケースワーカーに吉岡里帆、川栄李奈はいませんでした。いるところ、ある?